1.閉塞性動脈硬化症(ASO)とは

閉塞性動脈硬化症(ASO)は、動脈硬化が進行し、動脈が詰まったり、狭くなったりした時に発病します。
外国では「閉塞性動脈硬化症(PAD)」という名称が一般的ですね。
高齢の男性がかかりやすく、食生活の変化によって、年々患者は増えています。

また、閉塞性動脈硬化症が起きる場所は下肢(脚)に多く、これは下肢動脈閉塞症と呼ばれます。

閉塞性動脈硬化症で気をつけなければならないことは、この病気にかかったということは、全身で動脈硬化が進行しているということです。
そのため、動脈硬化によって引き起こされる心疾患や脳梗塞などの病気と合併して発症することがあります。

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2.閉塞性動脈硬化症の症状

閉塞性動脈硬化症の症状は、段階によって以下のように4つに分けられます。

  • Ⅰ度 強い運動や歩行の後に、手足が冷感やしびれを感じる、脱毛
  • Ⅱ度 歩くと足が痛んだりや硬直する
  • Ⅲ度 安静にしていても足が痛む、眠れないレベルで疼痛が起こる
  • Ⅳ度 潰痕、壊死が発生する、潰痕部に激痛

Ⅰ度 初期段階は軽い手足の冷え、しびれ

初期段階では、運動をした後に軽い手足の冷えやしびれを感じることがあります。
これは、運動をする時には安静時の何倍もの血液が必要で、動脈硬化が進んでいると、血液の運搬が滞ることから発生します。

気をつけなければならないことは、「初期段階では、閉塞性動脈硬化症は無症状のうちに進むこともある」ということです。
足の動脈は3本あり、1本が動脈硬化になっても他の血管がまだ機能し続けます。
このため、症状が起きることなく閉塞性動脈硬化症が進行することがあるのです。

Ⅱ度 歩行障害に注意!

中期にさしかかると、間欠性跛行(かんけつせいはこう)という歩行障害が発生します。
ある程度の距離を歩くと、下半身(特にふくらはぎ)に強いだるさや痛みを感じ、動けなくなってしまいます。

しかし、少し休憩すれば痛みはなくなり、また歩けるようになります。
このため、この段階になっても症状を自覚しづらいのです。

Ⅲ度 脚に血が流れなくなり、激しい痛み

この段階までくると、眠ることが困難な程の痛みが発生するようになります。
また、足先に潰瘍(ただれ)が発生し始めます。
潰瘍が発生すると、脚が壊死して、最終的に脚を切り離さなければならない可能性が高くなってきます。

これは重症虚血肢といって、動脈が本格的に詰まったり、狭くなったりしている状態になります。

Ⅳ度 潰瘍や壊疽が発生し、簡単な治療では治せなくなる

最後には、ちょっとした傷口から潰瘍が発生し、これが進行して壊疽(えそ)が出来てしまいます。
壊疽になると、その部分は真っ黒になり、普通の薬などによる治療は不可能になります。

そのままの状態で放置すると、そこが壊死して、その部分を切断しないといけなくなってしまうのです。

下肢閉塞性動脈硬化症の人は合併症が起きやすい

下肢閉塞性動脈硬化症(足の閉塞性動脈硬化症)にかかった人は、合併症にも注意が必要です。

下肢閉塞性動脈硬化症と診断された場合、他の部位にも動脈硬化が発生していることが多くあります。
そのため、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞も合わせて発病する可能性が高くなるのです。

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3.閉塞性動脈硬化症の原因

閉塞性動脈硬化症につながる、動脈硬化の原因は?

閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が進行し、動脈が詰まったり狭くなったりすると発病します。
そのため、動脈硬化が発生すると、症状は徐々に進んでいきます。

つまり、動脈硬化の原因が、閉塞性動脈硬化症の原因になるのです。
動脈硬化につながる具体的な生活習慣病は、以下のようなものがあります。

  • 高血圧
  • 高血糖
  • 脂質異常症(高脂血症)

他にも、喫煙をしていたり、メタボリックシンドロームである人は動脈硬化が起きやすいです。

上にも書いた通り、閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が進行すると発症します。
そのため、そもそもの動脈硬化の原因がそのまま閉塞性動脈硬化症の原因になる訳ですね。

喫煙者や糖尿病患者の閉塞性動脈硬化症はより深刻になりやすい

喫煙者や糖尿病患者の閉塞性動脈硬化症は、より症状が進行しやすいとされています。

喫煙者が閉塞性動脈硬化症になった場合、非喫煙者に比べて、間欠性跛行(歩行障害)が生じる確率が約3倍になるといわれています。

糖尿病の患者さんはより大変で、他の人よりもずっと閉塞性動脈硬化症が重症化しやすいです。
治療のために足を切断するレベルまで進行する可能性が、約5倍になるとされています。

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4.閉塞性動脈硬化症を放っておくと、深刻な合併症が発生する

閉塞性動脈硬化症を煩っている人は、全身で動脈硬化が発生していると考えられるため、閉塞性動脈硬化症以外にも心筋梗塞、心疾患といった病気にかかってしまう人が少なくありません。

他にも、以下のような合併症の危険があります。

  • 重症虚血肢
  • 虚血性心疾患
  • 脳血管障害

重症虚血肢

閉塞性動脈硬化症の約15~20%の人が、間欠性跛行からこれにかかるとされています。

重症虚血肢は、動脈硬化の進行によって、足への血流がほどんど途切れてしまった状態のことです。
これにかかると、足は潰瘍や壊疽ができ、色が灰色や黒になっていきます。

この潰瘍や壊疽から細菌が感染すると、発熱足が腫れてしまうなどの症状が出ます。
もし細菌が血管に入ってしまった場合、敗血症といって命に関わる病気になります。

これを防ぐために、足を切断する場合もあるのです。

虚血性心疾患

虚血性心疾患とは、いわゆる狭心症や心筋梗塞のことですね。
閉塞性動脈硬化症は足に起きやすい病気ですが、虚血性心疾患は心臓に起きる病気のことです。

足の動脈は太く、太ももの部分で約5~6mm、膝からつま先までは約2〜4mmほどの太さです。
しかし、心臓付近の動脈はその半分以下の太さしかありません。

足程の太い動脈が詰まってしまう程に動脈硬化が進行しているのなら、心臓付近の細い動脈でも動脈硬化が進行していても不思議ではありませんよね。

そのため、閉塞性動脈硬化症と虚血性心疾患を合わせて発病して、虚血性心疾患で亡くなる方も少なくないのです。

脳血管障害

虚血性心疾患と同様に、動脈硬化が脳でも生じていた場合、脳血管障害になることがあります。
有名な病気では、脳梗塞や脳出血が挙げられます。

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5.治療方法

閉塞性動脈硬化症は、症状が重くなる程治療法も大掛かりなものになっていきます。
早期発見のため、少しでも症状に思い当たりがあったら、血管外科や循環器科のお医者様にかかることをお勧めします。

症状が軽い場合(Ⅰ〜Ⅱ度)

症状がまだ軽い段階であった場合、以下のような治療法が挙げられます。

  • 禁煙
  • 薬物療法
  • 運動療法

禁煙は閉塞性動脈硬化症の予防、治療の基本

閉塞性動脈硬化症になった場合、タバコを吸う人は禁煙をしなければなりません。
上でも述べたように、喫煙は閉塞性動脈硬化症の重症化につながりやすく、動脈硬化の原因の一つでもあります。

まずは禁煙から、閉塞性動脈硬化症の治療は始まるのです。

薬物療法

動脈硬化の原因である生活習慣病に対する薬物投与や、「抗血小板薬」という薬の投与を行う療法があります。
抗血小板薬は血液をサラサラにするため、動脈硬化改善に効果的です。

運動療法

ウォーキングによって足の血管を鍛え、血液の流れが止まらないようにする療法です。
間欠性跛行の段階だった場合、薬物療法と運動療法のみで閉塞性動脈硬化症が改善される場合もあるので、運動療法は非常に有効です。

症状が重い場合(Ⅲ〜Ⅳ度)

閉塞性動脈硬化症がだいぶ進行し、症状が重くなっていた場合、動脈硬化の起きている血管に直接手を加える治療が多くなってきます。
治療には以下のようなものがあります。

  • カテーテル治療
  • ハイブリッド治療
  • 外科的バイパス手術
  • 腹部交感神経ブロック
  • 炭酸泉療法
  • 下肢切断

カテーテル治療

カテーテルという細い管を血管に通して、血管の内側から広げたり、ステンとという管を設置して血管の太さを維持する治療法です。

患者さんの負担も少なく、時間がかからないことが特徴です。

ハイブリット治療

カテーテル治療が行いづらい場所の動脈硬化には、ハイブリッド治療が行われます。
血管が詰まった場所を迂回して、狭窄拡張術をカテーテル治療と同時に行う治療法です。

外科的バイパス手術

カテーテル治療も、ハイブリッド治療も行えなかったり、失敗したりした場合、外科的バイパス手術が行われます。

血管を切開して動脈硬化が発生している部分を取り除いたり、血管を人工血管を取り替えたりといった手術が、患者の状況に合わせて行われます。

重症虚血肢の患者さんへの治療

重症虚血肢の患者さんは、小さな傷から潰瘍や壊疽が始まってしまうことがあります。
そのため、以下のような治療を行います。

  • 腰部交感神経ブロック
    下肢の血流や痛覚の神経をブロックし、血管の拡張や痛みの軽減を行う
  • 炭酸泉療法
    炭酸水に患部をひたし、血流をよくする

下肢切断

下肢の壊死が進行し、治療による動脈硬化の改善が不可能になった場合、下肢切断が行われます。

下肢切断を行った場合、患者さんのその後の生活への悪影響が大きすぎるため、早期発見・早期治療によって下肢切断の回避をすることが大切です。

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